オンコール待機って何?
訪問看護ステーションに訪問看護師として働く上で特に重要になってくるものにオンコール待機というポイントがあります。ここでは、オンコール待機では何をするのか、どんなスケジュールになるのかなどについて説明していきたいと思います。
まず、オンコール待機とは、訪問看護ステーションの営業終了時間から翌日の営業時間までの間、自宅などで電話番をすることを指します。ステーションによっては必ず自宅で待機することを命じられたり、電話をもらって10〜15分以内に出動することができれば問題ないと命じているところもあり、待機条件については多種多様です。
いずみ訪問看護リハビリステーション長岡京では、営業時間が8時30分から17時30分までとなるので、17時30分から翌朝8時30分までを自宅で待機していただくことになります。当ステーションでは必ず自宅で待機していなければならないとは指示しておらず、電話を受けて訪問までに60分以内に着けば良いとしています。ただ、できるだけ早く訪問できることが望ましいので、不必要な外出は避けるようにスタッフには伝えています。
当ステーションでは、オンコール番号が1つと決まっているので、営業終了時間になるとその携帯番号から各待機者へ転送するように設定しています。
平日であれば基本的に日勤の業務が終了して、そのままオンコール待機をすることになります。ここで疑問をもたれる方もいるかもしれませんが、夜間常時起床していなければならないというルールはありません。電話がなければ、普通にお風呂に入ったり、トイレに行ったり、夜間も寝ています。まさしく、普通の生活を送っています。ただ、お風呂に使っている時やトイレに行ってる間も電話がいつ来るか分かりませんので、会社から支給されたスマホを常に肌身離さず持っている必要があります。シャワーを浴びている時などは特に気を使います。シャワーの音で電話が鳴っているかわからなくなるため、何回もスマホを確認して着信が入ってないかびくびくしながら確認していた頃もあります。最近ではジップロックにスマホを入れて、お風呂の中に持ち込むこともできるので、安心して対応をすることが可能です。
とは言え、寝ている時も、頭元にスマホを置いて、着信がなればすぐに対応できるように意識しておかなければならないので、常にストレスにさらされているともいえます。慣れてくると特段ストレスではなくなるのですが、寝過ごしてしまってたらどうしようなどの不安や焦燥感はオンコール待機をし始めた頃は皆さん感じていると思います。
緊急対応の事例紹介
さて、実際にどのような電話が来るのかについても触れていきたいと思います。以下にいくつか例を挙げていきます。
【事例1】
「肺がんが悪化したのか呼吸が苦しそうです。」と家族より緊急コールあり。
対応例:呼吸回数、口唇や手指のチアノーゼの有無を確認して緊急性を把握する。事前に処方されている頓服のオプソを服用してもらう。CSIが留置されていればレスキューボタンを押してもらう。酸素量を上げるよう指示する。ベッドの頭部ギャッジアップ10~16°を指示する(体の位置がずり落ちているのであれば無理にしない。逆効果になる可能性あり。頭側へ移動させてG-upがおすすめ。)。必要であれば緊急訪問を行い安楽なポジショニングを調整したり、頓服の介助、鎮静薬の投与(舌下投与、点滴、座薬など)、酸素投与量の増加などを行う。在宅酸素が無ければ主治医へ報告し、HOT(在宅酸素)の導入を検討してもらう。
【事例2】
「血便が大量に出ています。」と緊急コールあり。
対応例:血便の色や量、気分不良、眩暈、呼吸困難、意識レベルなどを確認して緊急訪問を行う。血便の色が新鮮血であれば大腸や直腸からの出血を疑う。黒色便であれば食道、胃、十二指腸、小腸からの出血を疑う。
【事例3】
「お腹が痛い。来てほしい。」と緊急コール。
対応例:排便が-4日目で、脱水傾向および傾向飲水量の減少があった。下腹部膨満があり浣腸および摘便にて両手分の硬便排出介助を行う。その後腹痛消失。水分摂取量を増量してもらうよう説明。便秘薬の調整を主治医へ依頼。MCTオイルを食事にかけて摂取してもらうことを勧め、下痢になるのであればオイル摂取量を減らしてもらうことを家族にも説明する。
【事例4】
「キッチンで座り込んでしまって立てなくなってしまったんで来てもらえませんか。」と家族より緊急コール。
対応例:意識レベル、目立った外傷や出血の有無を確認し、無理に動かさない、または動かないことを伝える。訪問時に再度上記の項目を確認する。転倒の場合に上肢や大腿骨頚部の骨折が多いため可動域制限、疼痛、内出血痕、腫脹などの有無を確認する。
外傷あり:骨折や靭帯腱断裂の疑いがあれば救急搬送。搬送先で異常が無ければそれでよい。
外傷なし:安全な場所への移動介助を行う。椅子への移乗介助後に歩行が可能であれば付き添いベッドまで移動して安静にしてもらう。クーリング、圧迫療法、挙上などで初期対応として様子を見る。移動介助が厳しければ、敷布団を用意して空調を整えつつ、介助人数を増やして対応する。
【事例5】
膀胱留置カテーテルから血尿(鮮血)が出ていると連絡あり。
対応例:疼痛の有無と出血持続性を確認し、疼痛著明であれば膀胱留置カテーテルの抜去を検討する(バルーンカテーテルが牽引されて膀胱内を損傷している可能性がある)。ただ、鮮血の出血が持続しているのであれば抜去することでさらなる出血を惹起してしまう可能性があるので主治医の判断を仰ぐ。多くの場合、出血に対して止血剤アドナが処方されることが多い。大量出血の場合は貧血リスクがあるので鉄剤が処方されることもある。
【事例6】
「腕が痺れ始めて、急に何を言っているのか聞き取りづらくなったんですが」と緊急コール。
対応例:意思の疎通は取れるが、右上肢の痺れが30分前に出現している。元々は普通に会話できる方であるが活舌が悪くなっておりうまく話せていない。バレー徴候(両腕を肩と同じ高さで前方に挙上させ、手掌を上に向けて指をくっつける。目を閉じて10秒間姿勢を保持してもらい、麻痺側の上肢が回内して下がってくれば、錐体路障害の影響が考えられる。ちなみに下肢バレー徴候はベッドにうつ伏せになってもらい、両膝関節が接しないように直角に曲げ、保持してもらう。麻痺側の下肢は自然に下降、落下したり、いったん落下して元に戻ったりするなどの症状を来す。下肢の錐体路障害では伸筋の緊張が屈筋の緊張よりも強くなるために、このような症状が出現する。)が陽性であったため脳梗塞や脳出血が疑われる。主治医へ電話にて報告して救急搬送することを報告する。
と、上記のような対応を求められることが多いですね。
対応の工夫
自分が訪問したことのある利用者様であれば、すぐに状況を把握して適切な指示を出すことができると思いますが、訪問に行ったことがない利用者様からのお電話であればやはり対応に不安が生じます。当ステーションではLINE WORKSを用いてすべての情報を一元管理しているため、訪問に行ったことない利用者様の情報もすぐに収集することができ、起こり得る緊急対応等の一覧表も作成して対応に差が出ないように留意しています。
ただ、どれだけ緊急対応等の一覧表を作成していても、それ以外の緊急対応案件が発生することもあります。その時にやはり臨床推論などの基本的なアセスメント能力を養っておく必要があります。このアセスメント能力はすぐに身に付くものではありませんので、日ごろから私たちはステーションで全体研修として取り組んでいます。診療看護師に月1回必ず臨床推論について学習会を開いてもらい、皆で最新情報を取り入れています。
ちなみに、当ステーションではオンコール待機は7人ほどで回しているため、月に4回程度が平均となっています。また、利用者数も多くオンコール出動することが多いため、待機翌日は午前中半休という体制を整えています。安心してオンコール対応ができるように、情報収集や情報共有の体制を整えつつ、身体的な負担を少しでも減らせるような体制で長く訪問看護師として働ける職場づくりを図っています。
まとめ
オンコール待機は長時間待機することで、ストレス負担が大きくのしかかります。ステーションの看護師人数が多い事業所では1ヵ月あたりのオンコール待機回数はさほど多くはありませんが、まだ看護師が少人数のステーションだと回数が多くなる傾向があります。ステーションを選ぶ際に看護師の人数やオンコール待機の回数を確認しておくことをお勧めいたします。
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